Lyric

食べていくための仕事にひと休みして 私はTVをつけた

眠らぬ旅のあれこれを 生まれた街で癒そうと試みていた

明日にはこの街にも雪がちらつくだろうと

季節はずれの天気予報が流れていた

明けきった5時半の空に 目を細めて チャンネルを変えた

中継という文字 そして私の瞳に爆風が噴きつけて来た

長い間に見慣れてしまっていた白く平たい石造りの建物から

朱色の炎と石くれが噴きあがる瞬間だった

ゆらゆらと熱のかげろうはあがり

やがて白い煙から土色の煙となって建物から噴き出していた

昨日までと今日は違うものなのだと

人はふいに思い知らされるのだね

蟻のように黒い人影が走り込む 身を潜める 這い進む 撃ち放つ

どうせTVの中のことだと考えることもできず 考えないわけにもいかず

ただ私は誰が何を伝えようとしているのか

それだけに耳を傾けた それだけに耳を傾けた

大きな救急車が扉を広く開けて待ち構え続けている

担架に乗り 肩にかつがれ 白い姿の人々が運び出される

日本人が救けられましたと 興奮したリポート

ディレクターの声もエンジニアの声もいり混じっている

人質が手を振っています元気そうです笑顔ですと

リポートは続けられている

その時ひとかたまりの黒い姿の人々が担架を囲んでとび出して来る

リポーターは日本人が手を振っていますとだけ嬉々として語り続ける

担架の上には黒く煤けた兵士

腕は担架からぶら下がり 足首がグラグラと揺れる

兵士の胸元に赤いしみが広がる

兵士の肩に彼の銃が ためらいがちに仲間によって載せられる

担架はそれきり全速力でいずこかへと運び出されてゆく

日本人が元気に手を振っていますとリポーターは興奮して伝え続ける

黒い蟻のようなあの1人の兵士のことは

ひと言も触れない ひと言も触れない

日本人の家族たちを喜ばせるためのリポートは 切れることなく続く

しかしあの兵士にも父も母も妻も子もあるのではなかったろうか

蟻のように真っ黒に煤けた彼にも 真っ黒に煤けた彼にも

あの国の人たちの正しさを ここにいる私は測り知れない

あの国の戦いの正しさを ここにいる私には測り知れない

しかし見知らぬ日本人の無事を喜ぶ心がある人たちが何故

救け出してくれた 見知らぬ人には心を払うことがないのだろう

この国は危い

何度でも同じあやまちを繰り返すだろう 平和を望むと言いながらも

日本と名の付いていないものにならば

いくらだって冷たくなれるのだろう

慌てた時に 人は正体を顕わすね

あの国の中で事件は終わり

私の中ではこの国への怖れが 黒い炎を噴きあげはじめた

4. 2. 3. …… 4. 2. 3. ……

日本人の人質は全員が無事

4. 2. 3. …… 4. 2. 3. ……

4. 2. 3. …… 4. 2. 3. ……

Options