病室を出てゆくというのに
びょうしつ を でて ゆくというのに
Byoushitsu wo Dete yukutoiunoni
こんなに心が重いとは思わなかった
こんなに こころ が おもい とは おもわ なかった
konnani Kokoro ga Omoi toha Omowa nakatta
きっとそれは
きっとそれは
kittosoreha
雑居病棟のベージュの壁の隅に居た
ざっきょ びょうとう の べーじゅ の かべ の すみ に いた
Zakkyo Byoutou no be^ju no Kabe no Sumi ni Ita
あのおばあさんが気がかりなせい
あのおばあさんが きが かりなせい
anoobaasanga Kiga karinasei
たった今飲んだ薬の数さえ
たった いま のん だ くすり の かず さえ
tatta Ima Non da Kusuri no Kazu sae
すぐに忘れてしまう彼女は しかし
すぐに わすれ てしまう かのじょ は しかし
suguni Wasure teshimau Kanojo ha shikashi
夜中に僕の毛布をなおす事だけは
よなか に ぼく の もうふ をなおす こと だけは
Yonaka ni Boku no Moufu wonaosu Koto dakeha
必ず忘れないでくれた
かならず わすれ ないでくれた
Kanarazu Wasure naidekureta
歳と共に誰もが子供に帰ってゆくと
とし と ともに だれも が こども に かえって ゆくと
Toshi to Tomoni Daremo ga Kodomo ni Kaette yukuto
人は云うけれどそれは多分嘘だ
にん は いう けれどそれは たぶん うそ だ
Nin ha Iu keredosoreha Tabun Uso da
思い通りにとべない心と動かぬ手足
おもい とおり にとべない こころ と うごか ぬ てあし
Omoi Toori nitobenai Kokoro to Ugoka nu Teashi
抱きしめて燃え残る夢達
だき しめて もえ のこる ゆめ たち
Daki shimete Moe Nokoru Yume Tachi
さまざまな人生を抱いた療養所は
さまざまな じんせい を だい た りょうようじょ は
samazamana Jinsei wo Dai ta Ryouyoujo ha
やわらかな陽溜りと かなしい静けさの中
やわらかな ひだまり と かなしい しずけさ の なか
yawarakana Hidamari to kanashii Shizukesa no Naka
病室での話題と云えば
びょうしつ での わだい と いえ ば
Byoushitsu deno Wadai to Ie ba
自分の病気の重さと人生の重さ それから
じぶん の びょうき の おもさ と じんせい の おもさ それから
Jibun no Byouki no Omosa to Jinsei no Omosa sorekara
とるに足らない噂話をあの人は
とるに たら ない うわさばなし をあの にん は
toruni Tara nai Uwasabanashi woano Nin ha
いつも黙って笑顔で聴くばかり
いつも だまって えがお で きく ばかり
itsumo Damatte Egao de Kiku bakari
ふた月もの長い間に
ふた がつ もの ながい まに
futa Gatsu mono Nagai Mani
彼女を訪れる人が誰もなかった それは事実
かのじょ を おとずれ る にん が だれも なかった それは じじつ
Kanojo wo Otozure ru Nin ga Daremo nakatta soreha Jijitsu
けれど人を憐れみや同情で
けれど にん を あわれ みや どうじょう で
keredo Nin wo Aware miya Doujou de
語れば それは嘘になる
かたれ ば それは うそ になる
Katare ba soreha Uso ninaru
まぎれもなく人生そのものが病室で
まぎれもなく じんせい そのものが びょうしつ で
magiremonaku Jinsei sonomonoga Byoushitsu de
僕より先にきっと彼女は出てゆく
ぼく より さきに きっと かのじょ は でて ゆく
Boku yori Sakini kitto Kanojo ha Dete yuku
幸せ 不幸せ それは別にしても
しあわせ ふしあわせ それは べつに しても
Shiawase Fushiawase soreha Betsuni shitemo
真実は冷やかに過ぎてゆく
しんじつ は ひや かに すぎ てゆく
Shinjitsu ha Hiya kani Sugi teyuku
さまざまな人生を抱いた療養所は
さまざまな じんせい を だい た りょうようじょ は
samazamana Jinsei wo Dai ta Ryouyoujo ha
やわらかな陽溜りと かなしい静けさの中
やわらかな ひだまり と かなしい しずけさ の なか
yawarakana Hidamari to kanashii Shizukesa no Naka
たったひとつ僕にも出来る
たったひとつ ぼく にも できる
tattahitotsu Boku nimo Dekiru
ほんのささやかな真実がある それは
ほんのささやかな しんじつ がある それは
honnosasayakana Shinjitsu gaaru soreha
わずか一人だが 彼女への見舞客に
わずか ひとり だが かのじょ への みまい きゃく に
wazuka Hitori daga Kanojo heno Mimai Kyaku ni
来週からなれること
らいしゅう からなれること
Raishuu karanarerukoto