「魔女に双子の兄を連れ去られ、
「 まじょ に ふたご の あに を つれ さら れ 、
「 Majo ni Futago no Ani wo Tsure Sara re 、
その時の恐怖から声帯をも奪われた少女。
その ときの きょうふ から せいたい をも うばわ れた しょうじょ 。
sono Tokino Kyoufu kara Seitai womo Ubawa reta Shoujo 。
声の出せなくなった彼女を目の当たりにした魔女は大いに喜び、
こえ の だせ なくなった かのじょ を めの あたり にした まじょ は おおい に よろこび 、
Koe no Dase nakunatta Kanojo wo Meno Atari nishita Majo ha Ooi ni Yorokobi 、
気まぐれに命だけはとらずに生かし続けていた……」
きまぐれ に いのち だけはとらずに いか し つづけ ていた ……」
Kimagure ni Inochi dakehatorazuni Ika shi Tsuzuke teita ……」
泣き腫らした瞳には 幾度の夜が過ぎ去った現在も
なき はら した ひとみ には いくど の よる が すぎ さった げんざい も
Naki Hara shita Hitomi niha Ikudo no Yoru ga Sugi Satta Genzai mo
あの日が網膜に薄く焼きついてた
あの にち が もうまく に うすく やき ついてた
ano Nichi ga Moumaku ni Usuku Yaki tsuiteta
家族に守られて 狭く優しいセカイに生きて
かぞく に まもら れて せまく やさしい せかい に いき て
Kazoku ni Mamora rete Semaku Yasashii sekai ni Iki te
頼れる存在を失った少女は
たよれ る そんざい を うった しょうじょ は
Tayore ru Sonzai wo Utta Shoujo ha
沈黙の中で なけなしの勇気を持って
ちんもく の なか で なけなしの ゆうき を もって
Chinmoku no Naka de nakenashino Yuuki wo Motte
神にではなく自らに祈る――――
かみ にではなく みずから に いのる ――――
Kami nidehanaku Mizukara ni Inoru ――――
幸せな記憶の詰まった家を 有無を言わさず
しあわせ な きおく の つま った いえ を うむ を いわ さず
Shiawase na Kioku no Tsuma tta Ie wo Umu wo Iwa sazu
厄介払いだと家主に追い出され
やっかい はらい だと やぬし に おいださ れ
Yakkai Harai dato Yanushi ni Oidasa re
眠る場所さえなく 手を差し伸べる者もいなくて
ねむる ばしょ さえなく て を さし のべ る もの もいなくて
Nemuru Basho saenaku Te wo Sashi Nobe ru Mono moinakute
過酷な現実に打ちのめされるけど
かこく な げんじつ に うち のめされるけど
Kakoku na Genjitsu ni Uchi nomesarerukedo
「生きてさえいれば、必ず機は訪れる」、と
「 いき てさえいれば 、 かならず き は おとずれ る 」、 と
「 Iki tesaeireba 、 Kanarazu Ki ha Otozure ru 」、 to
兄の言葉に想い馳せ涙拭う
あに の ことば に おもい はせ なみだ ぬぐう
Ani no Kotoba ni Omoi Hase Namida Nuguu
仰ぎ視た深緑の夢 今は遠い幻想に消えて
あおぎ みた しんりょく の ゆめ いま は とおい げんそう に きえ て
Aogi Mita Shinryoku no Yume Ima ha Tooi Gensou ni Kie te
もう二度と戻れぬ場所に 追憶を捧ぐ...
もう にど と もどれ ぬ ばしょ に ついおく を ささぐ ...
mou Nido to Modore nu Basho ni Tsuioku wo Sasagu ...
『この瞬間もどこかで。ねぇ、心配してるかな?』
『 この しゅんかん もどこかで 。 ねぇ 、 しんぱい してるかな ? 』
『 kono Shunkan modokokade 。 nee 、 Shinpai shiterukana ? 』
自分のことよりも 私の身を案じてる風景が
じぶん のことよりも わたし の みを あんじ てる ふうけい が
Jibun nokotoyorimo Watashi no Miwo Anji teru Fuukei ga
目に浮かぶようで胸が ah... 絞めつけられて――――
めに うか ぶようで むね が ah... しめ つけられて ――――
Meni Uka buyoude Mune ga ah... Shime tsukerarete ――――
「他に親類もおらず、頼れる者もいない。
「 ほかに しんるい もおらず 、 たよれ る もの もいない 。
「 Hokani Shinrui moorazu 、 Tayore ru Mono moinai 。
そんな少女が一人で簡単に生きていけるほど、
そんな しょうじょ が ひとり で かんたん に いき ていけるほど 、
sonna Shoujo ga Hitori de Kantan ni Iki teikeruhodo 、
この世界は優しくできてはいない。
この せかい は やさし くできてはいない 。
kono Sekai ha Yasashi kudekitehainai 。
ましてや声の出せない彼女には、意志の疎通さえも難しくて……」
ましてや こえ の だせ ない かのじょ には 、 いし の そつう さえも むずかしく て ……」
mashiteya Koe no Dase nai Kanojo niha 、 Ishi no Sotsuu saemo Muzukashiku te ……」
故郷を離れ 一人では初めてゆく大きな街へ
こきょう を はなれ ひとり では はじめて ゆく おおき な まち へ
Kokyou wo Hanare Hitori deha Hajimete yuku Ooki na Machi he
不安抱え それでも負けないと決めて
ふあん だえ それでも まけ ないと きめ て
Fuan Dae soredemo Make naito Kime te
どうにか拾われたのは 富豪の家での下働き
どうにか ひろわ れたのは ふごう の いえ での したばたらき
dounika Hirowa retanoha Fugou no Ie deno Shitabataraki
屋根の下眠れるだけで 涙が零れた――――
やね の した ねむれ るだけで なみだ が こぼれ た ――――
Yane no Shita Nemure rudakede Namida ga Kobore ta ――――
『私、頑張ってるよ。なんとかやれてるよ』
『 わたし 、 がんばって るよ 。 なんとかやれてるよ 』
『 Watashi 、 Ganbatte ruyo 。 nantokayareteruyo 』
過保護な両親と 私を庇って囚われた兄の笑顔を想い
かほご な りょうしん と わたし を かばって とらわ れた あに の えがお を おもい
Kahogo na Ryoushin to Watashi wo Kabatte Torawa reta Ani no Egao wo Omoi
眠り...仰ぐ深緑の夢 今は遠い幻想に消えて
ねむり ... あおぐ しんりょく の ゆめ いま は とおい げんそう に きえ て
Nemuri ... Aogu Shinryoku no Yume Ima ha Tooi Gensou ni Kie te
もう二度と戻れぬ場所に 追憶を捧ぐ...
もう にど と もどれ ぬ ばしょ に ついおく を ささぐ ...
mou Nido to Modore nu Basho ni Tsuioku wo Sasagu ...
『きっと逢いに行くから、守られてばかりの私だったけれど……』
『 きっと あい に いく から 、 まもら れてばかりの わたし だったけれど ……』
『 kitto Ai ni Iku kara 、 Mamora retebakarino Watashi dattakeredo ……』
少女はその唇を噛み締めて 淡い決意に枕を濡らした――――
しょうじょ はその くちびる を かみ しめ て あわい けつい に まくら を ぬら した ――――
Shoujo hasono Kuchibiru wo Kami Shime te Awai Ketsui ni Makura wo Nura shita ――――
「ある朝、水を汲みに井戸にいくと、
「 ある あさ 、 みず を くみ に いど にいくと 、
「 aru Asa 、 Mizu wo Kumi ni Ido niikuto 、
見たことのない二人が隠れるようにして体を拭っていた。
みた ことのない ふたり が かくれ るようにして からだ を ぬぐって いた 。
Mita kotononai Futari ga Kakure ruyounishite Karada wo Nugutte ita 。
僅かだけ垣間見えた彼らの素肌には、確かに魔女の烙印があって……」
わずか だけ かいま みえ た かれら の すはだ には 、 たしかに まじょ の らくいん があって ……」
Wazuka dake Kaima Mie ta Karera no Suhada niha 、 Tashikani Majo no Rakuin gaatte ……」
「ねぇ、見られてるっ!」
「 ねぇ 、 みら れてるっ ! 」
「 nee 、 Mira reterutsu ! 」
「くっ、行くぞっ」
「 くっ 、 いく ぞっ 」
「 kutsu 、 Iku zotsu 」
「……っ」
「…… っ 」
「…… tsu 」
「少女は必死に引き留めようとするものの、声が出ずそれも叶わない。
「 しょうじょ は ひっし に びき とめ ようとするものの 、 こえ が でず それも かなわ ない 。
「 Shoujo ha Hisshi ni Biki Tome youtosurumonono 、 Koe ga Dezu soremo Kanawa nai 。
仕事を放り出し、無心で二人を追いかける。
しごと を ほうりだし 、 むしん で ふたり を おい かける 。
Shigoto wo Houridashi 、 Mushin de Futari wo Oi kakeru 。
きっと彼らは兄と一緒に、魔女の城に囚われていた人達に違いないと確信して。
きっと かれら は あに と いっしょに 、 まじょ の しろ に とらわ れていた ひとたち に ちがい ないと かくしん して 。
kitto Karera ha Ani to Isshoni 、 Majo no Shiro ni Torawa reteita Hitotachi ni Chigai naito Kakushin shite 。
離れ離れになってしまった兄の事が聞けるかもしれないと、
はなれ はなれ になってしまった あに の こと が きけ るかもしれないと 、
Hanare Hanare ninatteshimatta Ani no Koto ga Kike rukamoshirenaito 、
期待に胸を膨らませて……」
きたい に むね を ふくらま せて ……」
Kitai ni Mune wo Fukurama sete ……」