「目覚めたのは、白雨の降りしきる小高い丘。
「 めざめ たのは 、 はくう の おり しきる おだか い おか 。
「 Mezame tanoha 、 Hakuu no Ori shikiru Odaka i Oka 。
辺りに人影はなく、ただ唇に暖かな温もりだけが残されていて。
あたり に ひとかげ はなく 、 ただ くちびる に あたたか な あたたも りだけが のこさ れていて 。
Atari ni Hitokage hanaku 、 tada Kuchibiru ni Atataka na Atatamo ridakega Nokosa reteite 。
僕はどうしてここにいるのだろう。
ぼくは どうしてここにいるのだろう 。
Bokuha doushitekokoniirunodarou 。
やっと会えたのに、一緒に帰ろうって伝えることもできず。
やっと あえ たのに 、 いっしょに かえろ うって つたえ ることもできず 。
yatto Ae tanoni 、 Isshoni Kaero utte Tsutae rukotomodekizu 。
ここで何があったのだろう。
ここで なに があったのだろう 。
kokode Nani gaattanodarou 。
シスは、別れ際に耳元で何事か囁いていた。
しす は 、 わかれ さいに みみもと で なにごと か しょう いていた 。
shisu ha 、 Wakare Saini Mimimoto de Nanigoto ka Shou iteita 。
けれどそれがどうしても、思いだせなくて――――」
けれどそれがどうしても 、 おもい だせなくて ――――」
keredosoregadoushitemo 、 Omoi dasenakute ――――」
初めて出会った その瞬間から
はじめて であった その しゅんかん から
Hajimete Deatta sono Shunkan kara
想いは決まっていたのかな?
おもい は きま っていたのかな ?
Omoi ha Kima tteitanokana ?
幸せって言葉の象徴は
しあわせ って ことば の しょうちょう は
Shiawase tte Kotoba no Shouchou ha
疑う余地なく、キミの存在だった
うたがう よち なく 、 きみ の そんざい だった
Utagau Yochi naku 、 kimi no Sonzai datta
色んなことが変わってしまって
いろんな ことが かわ ってしまって
Ironna kotoga Kawa tteshimatte
二人離れてしまったけれど
ふたり はなれ てしまったけれど
Futari Hanare teshimattakeredo
まだ変わらないモノも 確かにあるはずだから
まだ かわ らない もの も たしかに あるはずだから
mada Kawa ranai mono mo Tashikani aruhazudakara
出会わなければ なんて 後悔した夜もあった
であわ なければ なんて こうかい した よる もあった
Deawa nakereba nante Koukai shita Yoru moatta
蒼白の空は遠すぎて いつまでも 届かない気がして
そうはく の そら は とおす ぎて いつまでも とどか ない きが して
Souhaku no Sora ha Toosu gite itsumademo Todoka nai Kiga shite
忘れられたら なんて 思い悩む時もあった
わすれ られたら なんて おもい なやむ とき もあった
Wasure raretara nante Omoi Nayamu Toki moatta
けれど奥底に包まれた 想いに嘘はつけない...
けれど おくそこ に つつま れた おもい に うそ はつけない ...
keredo Okusoko ni Tsutsuma reta Omoi ni Uso hatsukenai ...
濡れているのは瞳だけじゃなくて
ぬれ ているのは ひとみ だけじゃなくて
Nure teirunoha Hitomi dakejanakute
小粒の白雨は全て洗い落とすように いつからだろう
こつぶ の はくう は すべて あらい おと すように いつからだろう
Kotsubu no Hakuu ha Subete Arai Oto suyouni itsukaradarou
降りつづけてた
おり つづけてた
Ori tsuzuketeta
「二人の思い出を消し去ろう。
「 ふたり の おもいで を けし さろ う 。
「 Futari no Omoide wo Keshi Saro u 。
あたしという存在に囚われることなどなく、
あたしという そんざい に とらわ れることなどなく 、
atashitoiu Sonzai ni Torawa rerukotonadonaku 、
全て忘れて幸せに生きられるように。
すべて わすれ て しあわせ に いき られるように 。
Subete Wasure te Shiawase ni Iki rareruyouni 。
二人はここで別れ、もう二度と出会うことはない」
ふたり はここで わかれ 、 もう にど と であう ことはない 」
Futari hakokode Wakare 、 mou Nido to Deau kotohanai 」
「囁かれたのは、そんな悲しい魔法。
「 ささやか れたのは 、 そんな かなし い まほう 。
「 Sasayaka retanoha 、 sonna Kanashi i Mahou 。
魔女と下僕は倒れ伏す少年を置き、静かにその場を後にした」
まじょ と げぼく は たおれ ふす しょうねん を おき 、 しずか にその ば を のちに した 」
Majo to Geboku ha Taore Fusu Shounen wo Oki 、 Shizuka nisono Ba wo Nochini shita 」
ぼやけた思考は 痛み残し
ぼやけた しこう は いたみ のこし
boyaketa Shikou ha Itami Nokoshi
鮮明に切り開かれた
せんめい に きり ひらか れた
Senmei ni Kiri Hiraka reta
蒼ざめた魔女の優しい魔法は
あお ざめた まじょ の やさしい まほう は
Ao zameta Majo no Yasashii Mahou ha
かかることはなく、言葉だけが残された
かかることはなく 、 ことば だけが のこさ れた
kakarukotohanaku 、 Kotoba dakega Nokosa reta
たとえば、誰もが幸せになれる
たとえば 、 だれも が しあわせ になれる
tatoeba 、 Daremo ga Shiawase ninareru
結末なんて望めなくても
けつまつ なんて のぞめ なくても
Ketsumatsu nante Nozome nakutemo
キミの心だけが ねぇ、泣いて終わるなんて...
きみ の こころ だけが ねぇ 、 ない て おわ るなんて ...
kimi no Kokoro dakega nee 、 Nai te Owa runante ...
昔みたいに なんて 簡単には言えないけれど
むかし みたいに なんて かんたん には いえ ないけれど
Mukashi mitaini nante Kantan niha Ie naikeredo
蒼白のキミに伝えたい いつまでも 忘れたりしないって
そうはく の きみ に つたえ たい いつまでも わすれ たりしないって
Souhaku no kimi ni Tsutae tai itsumademo Wasure tarishinaitte
白雨に霞む 空が ただ切なく思えるのは
はくう に かすむ そら が ただ せつな く おもえ るのは
Hakuu ni Kasumu Sora ga tada Setsuna ku Omoe runoha
寂しい風景その下の どこかにキミがいるから...
さびし い ふうけい その したの どこかに きみ がいるから ...
Sabishi i Fuukei sono Shitano dokokani kimi gairukara ...
「ありがとうなんて感情が、まだあたしにもあったんだ。
「 ありがとうなんて かんじょう が 、 まだあたしにもあったんだ 。
「 arigatounante Kanjou ga 、 madaatashinimoattanda 。
でも、これで本当のさよならにしよう……?ね」
でも 、 これで ほんとう のさよならにしよう …… ? ね 」
demo 、 korede Hontou nosayonaranishiyou …… ? ne 」
傷つき 傷つけ 遠ざけて
きずつ き きずつ け とおざ けて
Kizutsu ki Kizutsu ke Tooza kete
なぜ... ? シスフェリア
なぜ ... ? しすふぇりあ
naze ... ? shisuferia
誓った未来は今でも
ちかった みらい は いま でも
Chikatta Mirai ha Ima demo
褪せることはなく この胸にあるよ...
あせ ることはなく この むね にあるよ ...
Ase rukotohanaku kono Mune niaruyo ...
「少年にかけられた小さな魔法。
「 しょうねん にかけられた ちいさ な まほう 。
「 Shounen nikakerareta Chiisa na Mahou 。
シスフェリアとの思い出が消えてしまうこと。
しすふぇりあ との おもいで が きえ てしまうこと 。
shisuferia tono Omoide ga Kie teshimaukoto 。
幸せに生きられるように、ということ。
しあわせ に いき られるように 、 ということ 。
Shiawase ni Iki rareruyouni 、 toiukoto 。
その二つの魔法は相反し、
その ふたつ の まほう は あいはんし 、
sono Futatsu no Mahou ha Aihanshi 、
少年の中で両立することは不可能だった。
しょうねん の なか で りょうりつ することは ふかのう だった 。
Shounen no Naka de Ryouritsu surukotoha Fukanou datta 。
彼女との記憶を忘れてしまうことは、
かのじょ との きおく を わすれ てしまうことは 、
Kanojo tono Kioku wo Wasure teshimaukotoha 、
少年にとって何一つ幸せなんかじゃなくて。
しょうねん にとって なに ひとつ しあわせ なんかじゃなくて 。
Shounen nitotte Nani Hitotsu Shiawase nankajanakute 。
魔法はその想いの強さに掻き消され、無効化されていた。
まほう はその おもい の つよさ に かき けさ れ 、 むこうか されていた 。
Mahou hasono Omoi no Tsuyosa ni Kaki Kesa re 、 Mukouka sareteita 。
少年は、再び旅路をゆく。
しょうねん は 、 ふたたび たびじ をゆく 。
Shounen ha 、 Futatabi Tabiji woyuku 。
次会えたときは、今度は自分から再会の口づけをするのだと、
じかい えたときは 、 こんど は じぶん から さいかい の くちづけ をするのだと 、
Jikai etatokiha 、 Kondo ha Jibun kara Saikai no Kuchizuke wosurunodato 、
心に誓って……」
こころ に ちかって ……」
Kokoro ni Chikatte ……」
「蒼白の果て。
「 そうはく の はて 。
「 Souhaku no Hate 。
それがどんなに遠くても、いつかきっと――――」
それがどんなに とおく ても 、 いつかきっと ――――」
soregadonnani Tooku temo 、 itsukakitto ――――」