降りしきる雨の中 私は父の背中を
おり しきる あめ の なか わたし は ちち の せなか を
Ori shikiru Ame no Naka Watashi ha Chichi no Senaka wo
じっと見つめている
じっと みつ めている
jitto Mitsu meteiru
雨が激しさを増した時
あめ が はげし さを まし た とき
Ame ga Hageshi sawo Mashi ta Toki
父は拳をギュッと握りしめ 小刻みに震えだした
ちち は こぶし を ぎゅっ と にぎり しめ こきざみ に ふるえ だした
Chichi ha Kobushi wo gyutsu to Nigiri shime Kokizami ni Furue dashita
祖母の小さい小さい体 黒いリボンの写真
そぼ の ちいさ い ちいさ い からだ くろい りぼん の しゃしん
Sobo no Chiisa i Chiisa i Karada Kuroi ribon no Shashin
はじめて見る 父の泣いてる姿
はじめて みる ちち の ない てる すがた
hajimete Miru Chichi no Nai teru Sugata
その背中から 無数の哀しみの糸が
その せなか から むすう の かなし みの いと が
sono Senaka kara Musuu no Kanashi mino Ito ga
私へと絡みついてくる
わたし へと からみ ついてくる
Watashi heto Karami tsuitekuru
そして 遠い 遠い記憶の彼方へと
そして とおい とおい きおく の かなた へと
soshite Tooi Tooi Kioku no Kanata heto
私を引きずるように誘っていく
わたし を びき ずるように さそって いく
Watashi wo Biki zuruyouni Sasotte iku
聞きなじんだなつかしい不協和音
きき なじんだなつかしい ふきょうわおん
Kiki najindanatsukashii Fukyouwaon
私をいらだたせる呪文のような
わたし をいらだたせる じゅもん のような
Watashi woiradataseru Jumon noyouna
私を不安にさせる 暗号のような
わたし を ふあん にさせる あんごう のような
Watashi wo Fuan nisaseru Angou noyouna
ハングル
はんぐる
hanguru
頭を駆け巡る
あたま を かけ めぐる
Atama wo Kake Meguru
ぐるぐるぐるぐる……
ぐるぐるぐるぐる ……
guruguruguruguru ……
すべてが私を 遠い 記憶へと誘っていく……
すべてが わたし を とおい きおく へと さそって いく ……
subetega Watashi wo Tooi Kioku heto Sasotte iku ……
熱く 激しい 暖かで穏やかな 血の記憶へと……
あつく はげしい あたたか で おだや かな ち の きおく へと ……
Atsuku Hageshii Atataka de Odaya kana Chi no Kioku heto ……
どこかで音がする なんの音だろう
どこかで おと がする なんの おと だろう
dokokade Oto gasuru nanno Oto darou
風だ 風の音だ 激しく畝る波
かぜ だ かぜ の おと だ はげしく うね る なみ
Kaze da Kaze no Oto da Hageshiku Une ru Nami
海 海の音だ 船 小さな小さな船
うみ うみ の おと だ ふね ちいさ な ちいさ な ふね
Umi Umi no Oto da Fune Chiisa na Chiisa na Fune
船の上だ
ふね の うえだ
Fune no Ueda
その船の上にいるのは
その ふね の うえに いるのは
sono Fune no Ueni irunoha
そこにいるのは…あれは あれは
そこにいるのは … あれは あれは
sokoniirunoha … areha areha
ハルモ二…ハルモニだ
はるも に … はるもに だ
harumo Ni … harumoni da
吹き飛ばされてしまいそうなハルモニ
ふきとば されてしまいそうな はるもに
Fukitoba sareteshimaisouna harumoni
ただ一点を真っ直ぐ 真っ直ぐに見つめ続けている
ただ いってん を まっすぐ ぐ まっすぐ ぐに みつ め つづけ ている
tada Itten wo Massugu gu Massugu guni Mitsu me Tsuzuke teiru
荒波に向かって 幼き父を胸に抱き
あらなみ に むか って おさなき ちち を むね に だき
Aranami ni Muka tte Osanaki Chichi wo Mune ni Daki
力強く そして やさしく……
ちからづよく そして やさしく ……
Chikarazuyoku soshite yasashiku ……
その先にいるのは…その先にいるのは…あれは…
その さきに いるのは … その さきに いるのは … あれは …
sono Sakini irunoha … sono Sakini irunoha … areha …
ハラポジ…ハラポジだ
はらぽじ … はらぽじ だ
harapoji … harapoji da
絆というあたたかな血は
きずな というあたたかな ち は
Kizuna toiuatatakana Chi ha
荒れ狂う波に憤然と立ち向かい
あれ くるう なみ に ふんぜん と たち むかい
Are Kuruu Nami ni Funzen to Tachi Mukai
帰るべき場所へと力強く運んでいく
かえる べき ばしょ へと ちからづよく はこん でいく
Kaeru beki Basho heto Chikarazuyoku Hakon deiku
帰るべき場所 愛しいものたちの腕の中へ
かえる べき ばしょ いとしい ものたちの うで の なか へ
Kaeru beki Basho Itoshii monotachino Ude no Naka he
遠い 遠い ただ一点をまっすぐに
とおい とおい ただ いってん をまっすぐに
Tooi Tooi tada Itten womassuguni
遠い 遠い 血の記憶
とおい とおい ち の きおく
Tooi Tooi Chi no Kioku
熱く 激しい 熱く 激しい…
あつく はげしい あつく はげしい …
Atsuku Hageshii Atsuku Hageshii …
雨が小止みになってきた
あめ が しょう とみ になってきた
Ame ga Shou Tomi ninattekita
あの不協和音が
あの ふきょうわおん が
ano Fukyouwaon ga
沁みるように私の中へと流れこんでくる
しみ るように わたし の なか へと ながれ こんでくる
Shimi ruyouni Watashi no Naka heto Nagare kondekuru
唄の代わりに語っていた
うた の かわり に かたって いた
Uta no Kawari ni Katatte ita
まだ半島にいた頃の思い出
まだ はんとう にいた ごろの おもいで
mada Hantou niita Gorono Omoide
彼らが交わしていたのは
かれら が まじわ していたのは
Karera ga Majiwa shiteitanoha
遠い 遠い記憶の扉への 暗号だった…
とおい とおい きおく の とびら への あんごう だった …
Tooi Tooi Kioku no Tobira heno Angou datta …
ハルモニの写真と目があった瞬間
はるもに の しゃしん と め があった しゅんかん
harumoni no Shashin to Me gaatta Shunkan
私の頬を 涙が つたった
わたし の ほお を なみだ が つたった
Watashi no Hoo wo Namida ga tsutatta
父が ゆっくりと ゆっくりと 私に近づいてくる
ちち が ゆっくりと ゆっくりと わたし に ちかづ いてくる
Chichi ga yukkurito yukkurito Watashi ni Chikazu itekuru
私は 父にありったけの思いを込めて 伝えたい
わたし は ちち にありったけの おもい を こめ て つたえ たい
Watashi ha Chichi niarittakeno Omoi wo Kome te Tsutae tai
「パパ おかえりなさい」
「 ぱぱ おかえりなさい 」
「 papa okaerinasai 」