ふるさとは捨ててきたはずなのに
ふるさとは すて てきたはずなのに
furusatoha Sute tekitahazunanoni
私は今また何故ここに来たんだろう
わたし は いま また なぜ ここに きた んだろう
Watashi ha Ima mata Naze kokoni Kita ndarou
三十年前暮らしてた私の家(いえ)
さんじゅう ねんまえ くらし てた わたし の いえ ( いえ )
Sanjuu Nenmae Kurashi teta Watashi no Ie ( ie )
今では大工職人の花木さんが一人で住んでいた
いま では だいく しょくにん の はな き さんが ひとり で すん でいた
Ima deha Daiku Shokunin no Hana Ki sanga Hitori de Sun deita
黒くすすけた低い天井と
くろく すすけた ひくい てんじょう と
Kuroku susuketa Hikui Tenjou to
六畳一間の古い柱の傷
ろく たたみ ひとま の ふるい はしら の きず
Roku Tatami Hitoma no Furui Hashira no Kizu
ここで父が荒れ狂い、母が泣き、姉が泣き
ここで ちち が あれ くるい 、 はは が なき 、 あね が なき
kokode Chichi ga Are Kurui 、 Haha ga Naki 、 Ane ga Naki
一家四人、全てあの時のまんまだ
いっか よにん 、 すべて あの ときの まんまだ
Ikka Yonin 、 Subete ano Tokino manmada
ふぞろいの湯飲み茶碗で
ふぞろいの ゆのみ ちゃわん で
fuzoroino Yunomi Chawan de
花木さんが入れたお茶を飲み
はな き さんが いれ たお ちゃ を のみ
Hana Ki sanga Ire tao Cha wo Nomi
目をつむったら聞こえてきた
め をつむったら きこ えてきた
Me wotsumuttara Kiko etekita
精一杯の生きる故の残酷な
せいいっぱい の いき る ゆえの ざんこく な
Seiippai no Iki ru Yueno Zankoku na
あまりにも残酷すぎる悲鳴が
あまりにも ざんこく すぎる ひめい が
amarinimo Zankoku sugiru Himei ga
貧しさが幼き瞳を
まずし さが おさなき ひとみ を
Mazushi saga Osanaki Hitomi wo
臆病という隅に追いやった時
おくびょう という すみ に おい やった とき
Okubyou toiu Sumi ni Oi yatta Toki
「耐えて行くのだ!」といったい誰が
「 たえ て いく のだ ! 」 といったい だれが
「 Tae te Iku noda ! 」 toittai Darega
手をつかみ強く言えるのだろう
て をつかみ つよく いえ るのだろう
Te wotsukami Tsuyoku Ie runodarou
つかの間の優しさで、幼き瞳が
つかの まの やさし さで 、 おさなき ひとみ が
tsukano Mano Yasashi sade 、 Osanaki Hitomi ga
こぼれ落ちそうな涙をこらえたら
こぼれ おち そうな なみだ をこらえたら
kobore Ochi souna Namida wokoraetara
黙って両手でただ抱きしめるだけでいい
だまって りょうて でただ だき しめるだけでいい
Damatte Ryoute detada Daki shimerudakedeii
優しくなかったのは私なんだから
やさし くなかったのは わたし なんだから
Yasashi kunakattanoha Watashi nandakara
清らかすぎる心と
きよし らかすぎる こころ と
Kiyoshi rakasugiru Kokoro to
まぶしい誠実が
まぶしい せいじつ が
mabushii Seijitsu ga
痛くて、恥ずかしくて、息苦しくなった時
いたく て 、 はずかし くて 、 いきぐるし くなった とき
Itaku te 、 Hazukashi kute 、 Ikigurushi kunatta Toki
人間は右手を自分の胸に
にんげん は みぎて を じぶん の むね に
Ningen ha Migite wo Jibun no Mune ni
そっと、押し当ててみるものだ
そっと 、 おし あて てみるものだ
sotto 、 Oshi Ate temirumonoda
いつの日からだろう心を語るのに
いつの にち からだろう こころ を かたる のに
itsuno Nichi karadarou Kokoro wo Kataru noni
こんなに気をつけなきゃいけなくなった
こんなに きを つけなきゃいけなくなった
konnani Kiwo tsukenakyaikenakunatta
悲しみが、どんな生き物よりわかるから
かなしみ が 、 どんな いきもの よりわかるから
Kanashimi ga 、 donna Ikimono yoriwakarukara
一心不乱に“勇気”と“希望”を探し当てるんだろう
いっしんふらん に “ ゆうき ” と “ きぼう ” を さがし あて るんだろう
Isshinfuran ni “ Yuuki ” to “ Kibou ” wo Sagashi Ate rundarou
しあわせが川の流れなら
しあわせが かわ の ながれ なら
shiawasega Kawa no Nagare nara
なぜ、知らない人たちがせきとめるのか
なぜ 、 しら ない にん たちがせきとめるのか
naze 、 Shira nai Nin tachigasekitomerunoka
壊れてゆこうとも生きてゆきたいのさ
こわれ てゆこうとも いき てゆきたいのさ
Koware teyukoutomo Iki teyukitainosa
踏みにじられたら腹から怒ればいいんだ
ふみ にじられたら はら から いかれ ばいいんだ
Fumi nijiraretara Hara kara Ikare baiinda
アジアの中の
あじあ の なかの
ajia no Nakano
日本という小さな島国は
にっぽん という ちいさ な しまぐに は
Nippon toiu Chiisa na Shimaguni ha
私の少年よりもっと貧しくなったみたいだ
わたし の しょうねん よりもっと まずしく なったみたいだ
Watashi no Shounen yorimotto Mazushiku nattamitaida
そして強いられるものは とてつもない窮屈さと
そして しいら れるものは とてつもない きゅうくつ さと
soshite Shiira rerumonoha totetsumonai Kyuukutsu sato
当たりさわりなき、意味のない自由というもの
あたり さわりなき 、 いみ のない じゆう というもの
Atari sawarinaki 、 Imi nonai Jiyuu toiumono
私の中に今、沸き上がってきた感情
わたし の なかに いま 、 わき あが ってきた かんじょう
Watashi no Nakani Ima 、 Waki Aga ttekita Kanjou
そうだ、これがまさしく私のふるさとなんだなあ
そうだ 、 これがまさしく わたし のふるさとなんだなあ
souda 、 koregamasashiku Watashi nofurusatonandanaa
誰よりも強かった父よ、言葉を忘れ歩けなくなった母よ
だれ よりも したたか った ちち よ 、 ことば を わすれ あるけ なくなった はは よ
Dare yorimo Shitataka tta Chichi yo 、 Kotoba wo Wasure Aruke nakunatta Haha yo
はらはらと はらはらと最期の桜が散っています
はらはらと はらはらと さいご の さくら が ちって います
haraharato haraharato Saigo no Sakura ga Chitte imasu