坊や 光を知らないアナタは
ぼうや ひかり を しら ない あなた は
Bouya Hikari wo Shira nai anata ha
視力という その概念自体 解らなかった
しりょく という その がいねんじたい わから なかった
Shiryoku toiu sono Gainenjitai Wakara nakatta
坊や 背中に抱きつきアナタは
ぼうや せなか に だき つき あなた は
Bouya Senaka ni Daki tsuki anata ha
「おかあさん。ひかり、あったかいね」と 無邪気に笑った
「 おかあさん 。 ひかり 、 あったかいね 」 と むじゃき に わらった
「 okaasan 。 hikari 、 attakaine 」 to Mujaki ni Waratta
嗚呼 ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい
ああ ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい
Aa gomennasai gomennasai gomennasai
アナタを産んだのは 私です 私です 罪深い《私》です……
あなた を うん だのは わたし です わたし です つみ ふかい 《 わたし 》 です ……
anata wo Un danoha Watashi desu Watashi desu Tsumi Fukai 《 Watashi 》 desu ……
母にして姉であり、断罪者にして贖罪者であった。
はは にして あね であり 、 だんざい もの にして しょくざい もの であった 。
Haha nishite Ane deari 、 Danzai Mono nishite Shokuzai Mono deatta 。
Therese von Ludowingの知られざる物語……。
Therese von Ludowing の しら れざる ものがたり ……。
Therese von Ludowing no Shira rezaru Monogatari ……。
森に移り住み 贖罪の日々を
もり に うつり すみ しょくざい の ひび を
Mori ni Utsuri Sumi Shokuzai no Hibi wo
薬草を集めて 煎じてみたり
やくそう を あつめ て せんじ てみたり
Yakusou wo Atsume te Senji temitari
神に祈っても 届きはしないし
かみ に いのって も とどき はしないし
Kami ni Inotte mo Todoki hashinaishi
罪を抱きしめて 祈れやしない
つみ を だき しめて いのれ やしない
Tsumi wo Daki shimete Inore yashinai
せめてあの子の為に 出来る限りの全てを
せめてあの こ の ために できる かぎり の すべて を
semeteano Ko no Tameni Dekiru Kagiri no Subete wo
遣りもしないで 唯 嘆いて等いられないわ
やり もしないで ただ なげい て など いられないわ
Yari moshinaide Tada Nagei te Nado irarenaiwa
──傷を癒し、病を治し、
── きず を いやし 、 びょう を なおし 、
── Kizu wo Iyashi 、 Byou wo Naoshi 、
時には冬に傾きかけた赤子をも取り上げた、森に住む賢い女の噂は、
ときに は ふゆ に かたむき かけた あかご をも とりあげ た 、 もり に すむ かしこい おんな の うわさ は 、
Tokini ha Fuyu ni Katamuki kaketa Akago womo Toriage ta 、 Mori ni Sumu Kashikoi Onna no Uwasa ha 、
何刻しか千里を駈け廻り、皮肉な運命を導く事となる……。
なに こく しか せんり を かけ まわり 、 ひにく な うんめい を みちびく こと となる ……。
Nani Koku shika Senri wo Kake Mawari 、 Hiniku na Unmei wo Michibiku Koto tonaru ……。
その夜 駆け込んで来たのは お忍びの候妃で
その よる かけ こん で きた のは お しのび の そうろう きさき で
sono Yoru Kake Kon de Kita noha o Shinobi no Sourou Kisaki de
月の無い闇の中を 希望の灯りを信じ
がつ の ない やみ の なか を きぼう の あかり を しんじ
Gatsu no Nai Yami no Naka wo Kibou no Akari wo Shinji
髪を振り乱す 母を奔らせたのは 訳ありの候女で
かみ を ふり みだす はは を はしら せたのは わけ ありの そうろう おんな で
Kami wo Furi Midasu Haha wo Hashira setanoha Wake arino Sourou Onna de
抱きしめた腕の中で もう息をしていなかった
だき しめた うで の なか で もう いき をしていなかった
Daki shimeta Ude no Naka de mou Iki woshiteinakatta
その幼子を託して 妃は泣き崩れた……
その おさなご を たくし て きさき は なき くずれ た ……
sono Osanago wo Takushi te Kisaki ha Naki Kuzure ta ……
救われる命があれば、奪われる命がある。
すくわ れる いのち があれば 、 うばわ れる いのち がある 。
Sukuwa reru Inochi gaareba 、 Ubawa reru Inochi gaaru 。
それを因果応報と切り捨てても良いのだろうか……。
それを いんがおうほう と きりすて ても よい のだろうか ……。
sorewo Ingaouhou to Kirisute temo Yoi nodarouka ……。
とても不思議な出来事によって 息子は光を手に入れたけど
とても ふしぎ な できごと によって むすこ は ひかり を てにいれ たけど
totemo Fushigi na Dekigoto niyotte Musuko ha Hikari wo Teniire takedo
それが果たして幸福なことだったのか 今となっては善く判らない……
それが はた して こうふく なことだったのか いま となっては よく わから ない ……
sorega Hata shite Koufuku nakotodattanoka Ima tonatteha Yoku Wakara nai ……
一度は冬に抱かれた 愛しい可愛い私の坊や
いちど は ふゆ に だか れた いとしい かわいい わたし の ぼうや
Ichido ha Fuyu ni Daka reta Itoshii Kawaii Watashi no Bouya
生きて春の陽射しの中で 笑って欲しいと願った母の
いき て はる の ひざし の なか で わらって ほしい と ねがった はは の
Iki te Haru no Hizashi no Naka de Waratte Hoshii to Negatta Haha no
想いも今や 唯 虚しく 束の間の陽光さえ
おもい も いまや ただ むなし く つかのま の ようこう さえ
Omoi mo Imaya Tada Munashi ku Tsukanoma no Youkou sae
戯れに 奪われてしまった
たわむれ に うばわ れてしまった
Tawamure ni Ubawa reteshimatta
観よ 嗚呼 この喜劇を ならば私は 世界を呪う本物の《魔女》に……
かん よ ああ この きげき を ならば わたし は せかい を のろう ほんもの の 《 まじょ 》 に ……
Kan yo Aa kono Kigeki wo naraba Watashi ha Sekai wo Norou Honmono no 《 Majo 》 ni ……
──そして、【第七の喜劇】は繰り返され続けるだろう……
── そして 、【 だいなな の きげき 】 は くりかえさ れ つづけ るだろう ……
── soshite 、【 Dainana no Kigeki 】 ha Kurikaesa re Tsuzuke rudarou ……