陽が昇り 嗚呼 汗塗れ 炊事洗濯全て 私の仕事
よう が のぼり ああ あせ ぬれ すいじ せんたく すべて わたし の しごと
You ga Nobori Aa Ase Nure Suiji Sentaku Subete Watashi no Shigoto
嗚呼 意地悪な 寡婦の口癖
ああ いじわる な かふ の くちぐせ
Aa Ijiwaru na Kafu no Kuchiguse
追い出されたいのかい? この愚図っ!
おいださ れたいのかい ? この ぐず っ !
Oidasa retainokai ? kono Guzu tsu !
なんて言うけれど――
なんて いう けれど ――
nante Iu keredo ――
私は今日も お父さん 頑張っているよ!
わたし は きょう も お とうさん がんばって いるよ !
Watashi ha Kyou mo o Tousan Ganbatte iruyo !
陽が落ちて 嗚呼 塵塗れ 炊事洗濯全て 押し付けた
よう が おち て ああ ちり ぬれ すいじ せんたく すべて おしつけ た
You ga Ochi te Aa Chiri Nure Suiji Sentaku Subete Oshitsuke ta
嗚呼 性悪な 義妹の口癖
ああ せいあく な ぎまい の くちぐせ
Aa Seiaku na Gimai no Kuchiguse
言い付けられたいのかい? この愚図っ!
いい づけ られたいのかい ? この ぐず っ !
Ii Zuke raretainokai ? kono Guzu tsu !
なんて言うけれど――
なんて いう けれど ――
nante Iu keredo ――
私は明日も お父さん 頑張ってみるよ!
わたし は あした も お とうさん がんばって みるよ !
Watashi ha Ashita mo o Tousan Ganbatte miruyo !
父は舟乗りだったのに、何故か井戸に落ちて死んだらしい。
ちち は ふなのり りだったのに 、 なぜか いど に おち て しん だらしい 。
Chichi ha Funanori ridattanoni 、 Nazeka Ido ni Ochi te Shin darashii 。
だから私は、あまり井戸が好きではない。
だから わたし は 、 あまり いど が すき ではない 。
dakara Watashi ha 、 amari Ido ga Suki dehanai 。
それでも継母は、容赦などしないのだ……。
それでも ままはは は 、 ようしゃ などしないのだ ……。
soredemo Mamahaha ha 、 Yousha nadoshinainoda ……。
井戸の傍で、糸を紡ぐ、指先はもう……
いど の ぼう で 、 いと を つむぐ 、 ゆびさき はもう ……
Ido no Bou de 、 Ito wo Tsumugu 、 Yubisaki hamou ……
嗚呼、擦切れて緋い血を出して、
ああ 、 さつ きれ て ひ い ち を だし て 、
Aa 、 Satsu Kire te Hi i Chi wo Dashi te 、
紅く糸巻きを染め上げたから
あかく いとまき きを そめ あげ たから
Akaku Itomaki kiwo Some Age takara
洗い流そうと井戸を覗き込んだら、
あらい ながそ うと いど を のぞき こん だら 、
Arai Nagaso uto Ido wo Nozoki Kon dara 、
水に焦がれる魚のように手から飛び出して、
みず に こが れる さかな のように て から とびだし て 、
Mizu ni Koga reru Sakana noyouni Te kara Tobidashi te 、
その糸巻きは、井戸の底に沈んだ。
その いとまき きは 、 いど の そこ に しずん だ 。
sono Itomaki kiha 、 Ido no Soko ni Shizun da 。
悲恋に嘆く乙女、正にそんな勢いで――
ひれん に なげく おとめ 、 まさに そんな いきおい で ――
Hiren ni Nageku Otome 、 Masani sonna Ikioi de ――
泣きながら帰った私に容赦なく、継母は言い放った――
なき ながら かえった わたし に ようしゃ なく 、 ままはは は いい ほうっった ――
Naki nagara Kaetta Watashi ni Yousha naku 、 Mamahaha ha Ii Houtsutta ――
「この愚図っ! 潜ってでも取ってきなっ! じゃなきゃ晩飯は抜きさっ!」
「 この ぐず っ ! せん ってでも とって きなっ ! じゃなきゃ ばんめし は ぬき さっ ! 」
「 kono Guzu tsu ! Sen ttedemo Totte kinatsu ! janakya Banmeshi ha Nuki satsu ! 」
「この愚図っ!」「取ってきなっ!」「晩飯は~抜きさっ!」
「 この ぐず っ ! 」「 とって きなっ ! 」「 ばんめし は ぬき さっ ! 」
「 kono Guzu tsu ! 」「 Totte kinatsu ! 」「 Banmeshi ha Nuki satsu ! 」
道急ぐ背中に、宵闇が迫っていた……
みち いそぐ せなか に 、 よいやみ が せまって いた ……
Michi Isogu Senaka ni 、 Yoiyami ga Sematte ita ……
目覚めれば綺麗な草原。
めざめ れば きれい な そうげん 。
Mezame reba Kirei na Sougen 。
幾千の花が咲き誇る。
いくせん の はな が さき ほこる 。
Ikusen no Hana ga Saki Hokoru 。
異土へ至る井戸の中で、衝動を抱いた男に遇って、彼の指揮で憾み唄った。私は――
い つち へ いたる いど の なか で 、 しょうどう を だい た おとこ に あって 、 かの しき で かん み うたった 。 わたし は ――
I Tsuchi he Itaru Ido no Naka de 、 Shoudou wo Dai ta Otoko ni Atte 、 Kano Shiki de Kan mi Utatta 。 Watashi ha ――
死んじゃったの? 天国なの? 気の【ceui】なの? 分からないわ。
しんじ ゃったの ? てんごく なの ? きの 【 ceui 】 なの ? わか らないわ 。
Shinji yattano ? Tengoku nano ? Kino 【 ceui 】 nano ? Waka ranaiwa 。
大丈夫! でも私は頑張るよ! お父さん、何時だって!
だいじょうぶ ! でも わたし は がんばる よ ! お とうさん 、 なんじ だって !
Daijoubu ! demo Watashi ha Ganbaru yo ! o Tousan 、 Nanji datte !
こまっちゃった。あたしを、ひっぱりだしてぇ。ひっぱりだしてぇ。
こまっちゃった 。 あたしを 、 ひっぱりだしてぇ 。 ひっぱりだしてぇ 。
komatchatta 。 atashiwo 、 hipparidashitee 。 hipparidashitee 。
もう、とっくのむかしにやけてるんだよぅ
もう 、 とっくのむかしにやけてるんだよぅ
mou 、 tokkunomukashiniyaketerundayou
マジで!
まじ で !
maji de !
こまっちゃった。ぼくを、ゆすぶってぇ。ゆすぶってぇ。
こまっちゃった 。 ぼくを 、 ゆすぶってぇ 。 ゆすぶってぇ 。
komatchatta 。 bokuwo 、 yusubuttee 。 yusubuttee 。
もう、みんなじゅくしきってるんだよぅ
もう 、 みんなじゅくしきってるんだよぅ
mou 、 minnajukushikitterundayou
わぉ!
わぉ !
wao !
喋るパンの願いを聞いて
しゃべる ぱん の ねがい を きい て
Shaberu pan no Negai wo Kii te
シャベルで全部 掻き出してあげたわ
しゃべる で ぜんぶ かき だし てあげたわ
shaberu de Zenbu Kaki Dashi teagetawa
そして――
そして ――
soshite ――
ひとつ残らず 実が落ちるまで 林檎の木を揺らし
ひとつ のこら ず み が おちる まで りんご の き を ゆら し
hitotsu Nokora zu Mi ga Ochiru made Ringo no Ki wo Yura shi
その後――
その のち ――
sono Nochi ――
散らばる林檎を 積み上げるだけの 簡単なお仕事
ちら ばる りんご を つみあげ るだけの かんたん なお しごと
Chira baru Ringo wo Tsumiage rudakeno Kantan nao Shigoto
キャー!!
きゃー !!
kya^ !!
形あるモノは、いつか必ず崩れ、
かたち ある もの は 、 いつか かならず くずれ 、
Katachi aru mono ha 、 itsuka Kanarazu Kuzure 、
命あるモノは、いずれ死を迎えるのさ
いのち ある もの は 、 いずれ し を むかえ るのさ
Inochi aru mono ha 、 izure Shi wo Mukae runosa
これまで、よく頑張ったね。お前は強い娘だね。
これまで 、 よく がんばった ね 。 お まえ は つよい むすめ だね 。
koremade 、 yoku Ganbatta ne 。 o Mae ha Tsuyoi Musume dane 。
でもこれからは、私のもとで働くなら、きっと幸せになれるわ!
でもこれからは 、 わたし のもとで はたらく なら 、 きっと しあわせ になれるわ !
demokorekaraha 、 Watashi nomotode Hataraku nara 、 kitto Shiawase ninareruwa !
うんっ、私頑張るっ!
うんっ 、 わたし がんばる っ !
untsu 、 Watashi Ganbaru tsu !
嗚呼 綺麗に舞い散る羽毛ぶとん 振るのが新たな私の仕事
ああ きれい に まい ちる うもう ぶとん ふる のが あらた な わたし の しごと
Aa Kirei ni Mai Chiru Umou buton Furu noga Arata na Watashi no Shigoto
嗚呼 地上に舞い落ちる雪の花 降るのは灼かな私の仕業
ああ ちじょう に まい おちる ゆき の はな ふる のは やか な わたし の しわざ
Aa Chijou ni Mai Ochiru Yuki no Hana Furu noha Yaka na Watashi no Shiwaza
「キミが、もし冬に逢いたくなったら、私に言ってねぇん▽」
「 きみ が 、 もし ふゆ に あい たくなったら 、 わたし に いっって ねぇん ▽」
「 kimi ga 、 moshi Fuyu ni Ai takunattara 、 Watashi ni Itsutte neen ▽」
あいたっ!
あいたっ !
aitatsu !
大きな門が開くと 黄金の雨が降ってきて
おおき な もん が ひらく と おうごん の あめ が ふって きて
Ooki na Mon ga Hiraku to Ougon no Ame ga Futte kite
あっという間に 全身 覆った……
あっという まに ぜんしん おおった ……
attoiu Mani Zenshin Ootta ……
キッケリキー! うちの、黄金のお嬢様のお帰りだよぅ
きっけりきー ! うちの 、 おうごん のお じょうさま のお かえり だよぅ
kikkeriki^ ! uchino 、 Ougon noo Jousama noo Kaeri dayou
日が替わり 嗚呼 黄金塗れ 炊事洗濯全て やらなくて良い!
にち が かわ り ああ おうごん ぬれ すいじ せんたく すべて やらなくて よい !
Nichi ga Kawa ri Aa Ougon Nure Suiji Sentaku Subete yaranakute Yoi !
嗚呼 低能な 継母の入れ知恵
ああ ていのう な ままはは の いれ ちえ
Aa Teinou na Mamahaha no Ire Chie
貴女も貰っておいで《可愛い実子》ちゃん!
あなた も もらって おいで 《 かわいい じっし 》 ちゃん !
Anata mo Moratte oide 《 Kawaii Jisshi 》 chan !
なんて言うけれど――
なんて いう けれど ――
nante Iu keredo ――
やれるものなら どうぞ 頑張っておいで!
やれるものなら どうぞ がんばって おいで !
yarerumononara douzo Ganbatte oide !
キッケリキー! うちの、バッチぃお嬢様のお帰りだよぅ
きっけりきー ! うちの 、 ばっち ぃお じょうさま のお かえり だよぅ
kikkeriki^ ! uchino 、 batchi io Jousama noo Kaeri dayou
日が過ぎて 嗚呼 瀝青塗れ
にち が すぎ て ああ れきせい ぬれ
Nichi ga Sugi te Aa Rekisei Nure
ほら 怠惰な態度が 貴女の罪よ 自業自得だわ ねぇ――
ほら たいだ な たいど が あなた の つみ よ じごうじとく だわ ねぇ ――
hora Taida na Taido ga Anata no Tsumi yo Jigoujitoku dawa nee ――
これからは貴女も 必死に頑張ってみなよ!
これからは あなた も ひっし に がんばって みなよ !
korekaraha Anata mo Hisshi ni Ganbatte minayo !