主よ、私は人間を殺めました。
しゅ よ 、 わたし は にんげん を さつ めました 。
Shu yo 、 Watashi ha Ningen wo Satsu memashita 。
私は、この手で大切な女性を殺めました。
わたし は 、 この てで たいせつ な じょせい を さつ めました 。
Watashi ha 、 kono Tede Taisetsu na Josei wo Satsu memashita 。
思えば私は、幼い時分より酷く臆病な性格でした。
おもえ ば わたし は 、 おさない じぶん より こく く おくびょう な せいかく でした 。
Omoe ba Watashi ha 、 Osanai Jibun yori Koku ku Okubyou na Seikaku deshita 。
他人というものが、私には何だかとても恐ろしく思えたのです。
たにん というものが 、 わたし には なんだ かとても おそろ しく おもえ たのです 。
Tanin toiumonoga 、 Watashi niha Nanda katotemo Osoro shiku Omoe tanodesu 。
私が認識している世界と、他人が認識している世界。
わたし が にんしき している せかい と 、 たにん が にんしき している せかい 。
Watashi ga Ninshiki shiteiru Sekai to 、 Tanin ga Ninshiki shiteiru Sekai 。
私が感じている感覚と、他人が感じている感覚。
わたし が かんじ ている かんかく と 、 たにん が かんじ ている かんかく 。
Watashi ga Kanji teiru Kankaku to 、 Tanin ga Kanji teiru Kankaku 。
『違う』ということは、私にとって耐え難い恐怖でした。
『 ちがう 』 ということは 、 わたし にとって たえ がたい きょうふ でした 。
『 Chigau 』 toiukotoha 、 Watashi nitotte Tae Gatai Kyoufu deshita 。
それがいづれ『拒絶』に繋がるということを、無意識の内に知っていたからです。
それがいづれ 『 きょぜつ 』 に つなが るということを 、 むいしき の ない に しって いたからです 。
soregaizure 『 Kyozetsu 』 ni Tsunaga rutoiukotowo 、 Muishiki no Nai ni Shitte itakaradesu 。
楽しそうな会話の輪にさえ、加わることは恐ろしく思えました。
たのしそう な かいわ の わ にさえ 、 くわわ ることは おそろ しく おもえ ました 。
Tanoshisou na Kaiwa no Wa nisae 、 Kuwawa rukotoha Osoro shiku Omoe mashita 。
私には判らなかったのです、他人に合わせる為の笑い方が。
わたし には わから なかったのです 、 たにん に あわ せる ための わらいかた が 。
Watashi niha Wakara nakattanodesu 、 Tanin ni Awa seru Tameno Waraikata ga 。
いっそ空気になれたら素敵なのにと、いつも口を閉ざしていました。
いっそ くうき になれたら すてき なのにと 、 いつも くち を とざ していました 。
isso Kuuki ninaretara Suteki nanonito 、 itsumo Kuchi wo Toza shiteimashita 。
そんな私に初めて声を掛けてくれたのが、彼女だったのです。
そんな わたし に はじめて こえ を かけ てくれたのが 、 かのじょ だったのです 。
sonna Watashi ni Hajimete Koe wo Kake tekuretanoga 、 Kanojo dattanodesu 。
美しい少女でした、優しい少女でした。
うつくし い しょうじょ でした 、 やさしい しょうじょ でした 。
Utsukushi i Shoujo deshita 、 Yasashii Shoujo deshita 。
月のように柔らかな微笑みが、印象的な少女でした。
がつ のように やわら かな ほほえみ が 、 いんしょうてき な しょうじょ でした 。
Gatsu noyouni Yawara kana Hohoemi ga 、 Inshouteki na Shoujo deshita 。
最初こそ途惑いはしましたが、私はすぐに彼女が好きになりました。
さいしょ こそ と まどい はしましたが 、 わたし はすぐに かのじょ が すき になりました 。
Saisho koso To Madoi hashimashitaga 、 Watashi hasuguni Kanojo ga Suki ninarimashita 。
私は彼女との長い交わりの中から、多くを学びました。
わたし は かのじょ との ながい まじわり の なか から 、 おおく を まなび ました 。
Watashi ha Kanojo tono Nagai Majiwari no Naka kara 、 Ooku wo Manabi mashita 。
『違う』ということは『個性』であり、『他人』という存在を『認める』ということ。
『 ちがう 』 ということは 『 こせい 』 であり 、『 たにん 』 という そんざい を 『 みとめ る 』 ということ 。
『 Chigau 』 toiukotoha 『 Kosei 』 deari 、『 Tanin 』 toiu Sonzai wo 『 Mitome ru 』 toiukoto 。
大切なのは『同一であること』ではなく、お互いを『理解し合うこと』なのだと。
たいせつ なのは 『 どういつ であること 』 ではなく 、 お たがい を 『 りかい し あう こと 』 なのだと 。
Taisetsu nanoha 『 Douitsu dearukoto 』 dehanaku 、 o Tagai wo 『 Rikai shi Au koto 』 nanodato 。
しかし、ある一点において、私と彼女は『違い過ぎて』いたのです。
しかし 、 ある いってん において 、 わたし と かのじょ は 『 ちがい すぎ て 』 いたのです 。
shikashi 、 aru Itten nioite 、 Watashi to Kanojo ha 『 Chigai Sugi te 』 itanodesu 。
狂おしい愛欲の焔が、身を灼く苦しみを知りました。
くるお しい あいよく の ほのお が 、 みを やく くるし みを しり ました 。
Kuruo shii Aiyoku no Honoo ga 、 Miwo Yaku Kurushi miwo Shiri mashita 。
もう自分ではどうする事も出来ない程、私は『彼女を愛してしまっていた』のです。
もう じぶん ではどうする こと も できな い ほど 、 わたし は 『 かのじょ を いとし てしまっていた 』 のです 。
mou Jibun dehadousuru Koto mo Dekina i Hodo 、 Watashi ha 『 Kanojo wo Itoshi teshimatteita 』 nodesu 。
私は勇気を振り絞り、想いの全てを告白しました。
わたし は ゆうき を ふり しぼり 、 おもい の すべて を こくはく しました 。
Watashi ha Yuuki wo Furi Shibori 、 Omoi no Subete wo Kokuhaku shimashita 。
しかし、私の想いは彼女に『拒絶』されてしまいました。
しかし 、 わたし の おもい は かのじょ に 『 きょぜつ 』 されてしまいました 。
shikashi 、 Watashi no Omoi ha Kanojo ni 『 Kyozetsu 』 sareteshimaimashita 。
その時の彼女の言葉は、とても哀しいものでした。
その ときの かのじょ の ことば は 、 とても かなしい ものでした 。
sono Tokino Kanojo no Kotoba ha 、 totemo Kanashii monodeshita 。
その決定的な『違い』は、到底『解り合えない』と知りました。
その けっていてき な 『 ちがい 』 は 、 とうてい 『 わかり あえ ない 』 と しり ました 。
sono Ketteiteki na 『 Chigai 』 ha 、 Toutei 『 Wakari Ae nai 』 to Shiri mashita 。
そこから先の記憶は、不思議と客観的なものでした。
そこから さきの きおく は 、 ふしぎ と きゃっかんてき なものでした 。
sokokara Sakino Kioku ha 、 Fushigi to Kyakkanteki namonodeshita 。
泣きながら逃げてゆく彼女を、私が追い駆けていました。
なき ながら にげ てゆく かのじょ を 、 わたし が おい かけ ていました 。
Naki nagara Nige teyuku Kanojo wo 、 Watashi ga Oi Kake teimashita 。
縺れ合うように石畳を転がる、《性的倒錯性歪曲》の乙女達。
もつれ あう ように いしだたみ を ころが る 、《 せいてき とうさく せい わいきょく 》 の おとめ たち 。
Motsure Au youni Ishidatami wo Koroga ru 、《 Seiteki Tousaku Sei Waikyoku 》 no Otome Tachi 。
愛を呪いながら、石段を転がり落ちてゆきました……。
あい を のろい ながら 、 いしだん を ころが り おち てゆきました ……。
Ai wo Noroi nagara 、 Ishidan wo Koroga ri Ochi teyukimashita ……。
この歪な心は、この歪な貝殻は、
この ひずな こころは 、 この ひずな かいがら は 、
kono Hizuna Kokoroha 、 kono Hizuna Kaigara ha 、
私の紅い真珠は歪んでいるのでしょうか?
わたし の あかい しんじゅ は ひずん でいるのでしょうか ?
Watashi no Akai Shinju ha Hizun deirunodeshouka ?
誰も赦しが欲しくて告白している訳ではないのです。
だれも ゆるし が ほし くて こくはく している わけ ではないのです 。
Daremo Yurushi ga Hoshi kute Kokuhaku shiteiru Wake dehanainodesu 。
この罪こそが、私と彼女を繋ぐ絆なのですから。
この つみ こそが 、 わたし と かのじょ を つなぐ きずな なのですから 。
kono Tsumi kosoga 、 Watashi to Kanojo wo Tsunagu Kizuna nanodesukara 。
この罪だけは、神にさえも赦させはしない……。
この つみ だけは 、 かみ にさえも ゆるさ せはしない ……。
kono Tsumi dakeha 、 Kami nisaemo Yurusa sehashinai ……。
──激しい雷鳴 浮かび上がる人影
── はげしい らいめい うか び あが る ひとかげ
── Hageshii Raimei Uka bi Aga ru Hitokage
いつの間にか祭壇の奥に『仮面の男』が立っていた──
いつの まに か さいだん の おく に 『 かめん の おとこ 』 が たって いた ──
itsuno Mani ka Saidan no Oku ni 『 Kamen no Otoko 』 ga Tatte ita ──